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   Inside MAX - ドキュメント・選手権2005 Vol.3 

開会式は二日目の朝に行われた。


対三重チャリオッツ戦。中澤(No.12)が乗っているのは大槻のバスケ車。


高橋浩則(No.5)は三重戦で22得点の活躍を見せた。

 

 

 

 

対埼玉戦。全日本女子新ヘッドコーチ対新アシスタントコーチの対決となった。

 


 

 

 

ハーフタイム。前半に思うように走れなかったMAX。自分達で話し合い、リズムの立て直しを図る。このあたりにチームとしての成長が見られる。

 


 

 

 

 

途中交代で出場した向後(左)と大槻(中央)。向後はとどめの3ポイントシュートを鮮やかに決めた。

大会二日目

MAXを襲った最大のピンチ。それは―

「このままでは試合に出ることはできません。持ち点カードの記載どおりに戻してください。」
それは試合開始20分前に下された突然の宣告だった。

車椅子バスケでは、試合前に持ち点カードに記載されあらかじめ届け出た方法で車椅子を使用しているかどうかのチェックを受ける。コート上にいる各選手の持ち点の合計が14点以内とルールで定められている車椅子バスケでは、あらかじめ選手は各人のもつ障害によって異なるパフォーマンスレベルに応じた持ち点が与えられる。より安全に、そしてよりよいパフォーマンスを得るために、選手はいろいろな工夫を車椅子に施すのであるが、その条件(使用するベルトの本数や固定位置など)を事前に届け出ておき、その通りに車椅子を使用しなければならない。

その突然の宣告は中澤正人(No.12)に対するものであった。
チームのトレーナーでブロンズクラスファイヤーでもある橘香織は自分の耳を疑い、絶句した。
「そんな・・・事前に確認したはずなのに」
そういえば、と橘は気づいた。中澤の持ち点カードを発行したのは昨年9月の選手権予選のときだった。中澤はその後、新しくバスケ車を作っている。その時に側板を新たにとりつけていたのであるが、選手権予選以降にカードを再発行した覚えがなかった。

完全な、チェックミスだった。

「困ったな。いや困った。」
監督の岩佐も顔色をなくした。
ことの成り行きを隣で見ていた藤本怜央(No.16)も、突然のアクシデントに動揺が見える。
持ち点カードの記載通りに車椅子を戻せば試合に出ることができる。しかし、そのためには中澤のバスケ車にとりつけられた側板をはずす必要があった。が、側板は強固に溶接されており、その場ではずすことはまず不可能だった。

「とにかく、誰かの車椅子を借りるしかない」
岩佐は高鳴る胸を押さえて周囲を見回した。目に入ったのが大槻朋由(No.7)の乗るバスケ車だった。大槻は今大会に向けて、自分のバスケ車に側板をとりつけていた。プッシュする際にベルトに指がひっかからないようにするためにとりつけたものなので、溶接ではなくネジで止めているだけであった。この側板をはずそう。試合開始時刻が迫っていた。躊躇している時間はなかった。
「すまん、大槻。バスケ車を取り替えてくれ」
大槻のバスケ車の側板をはずして中澤と交換すれば、条件的にはクリアできる。しかし、大槻のバスケ車は中澤のそれよりも座面高が低く作られている。大槻は普段よりも高い車椅子にのってプレーしなければならない。
しかし、大槻はだまってOKした。岩佐自ら大槻のバスケ車を持ってメカニックに走った。
再度、クラスファイヤーのチェックを受け、試合出場の許可が出たのは、前の試合が終わる数分前であった。

橘はまだ動揺していた。トレーナーとして試合前のアップを任されている立場であったが、この一件のために試合直前のアップを見ることができなかった。中澤、大槻両選手もアップに参加できずにいた。
「どうしよう・・・。どうしよう・・・。」

涙があふれてとまらなかった。悲しいからではなく、ただ怖かったのだ。こんな初歩的なミスのために、これまでのみんなの努力が水の泡になってしまったら・・・。
ほどなく前の試合が終わった。すぐにコートに入り、試合の準備をしなければならない。
藤井新悟(No.11)は一言残してコートに入っていった。
「俺達に任せろ。」

この状況を挽回するには勝つしかない。今は気持ちを切り替えて、目の前の試合に集中することだ。
胸のうちのざわめきがおさまらないまま、最初の戦いは始まった。

全員で走るバスケを 〜対三重チャリオッツ戦

先制したのは三重。No.11三浦文閣の3ポイントシュートがいきなり炸裂した。MAXも藤井→怜央のホットラインや高橋のミドルシュートで応戦するが、火のついた三浦のシュートは止まらない。三重が先手をとり、MAXが追う展開。しかし、「インサイドでやられているわけではなくアウトサイドのシュートだけだったので、焦りはなかった(藤本怜央談)」。1Qは14-17と三重3点リードで終了。

2Qに入っても、一進一退の攻防が続く。残り5分、中澤がオフェンスリバウウンドからそのままねじ込んでようやくMAXがリードを奪う。ディフェンスをフルコートプレスに切り替え、一気に畳み掛けるMAX。「全員で走るバスケを」と厳しい冬に走りこんできた成果を見せつけた。逆に6点のリードを奪い、34-28で前半終了。

後半に入り、三重No.11・三浦のシュート率が下がる。MAXはNo.4東海林和幸の速攻から幕を開け、一気に点差を開いた。No.5高橋もミドルシュートあり、ゴール下にもぐりこんでのシュートあり、で終わってみれば22得点の活躍。3Qでさらに点差を25点に開き、勝負を決めた。

4QではNo.8佐藤正哲、No.10向後寄夫を投入。特に向後は短い出場時間ながらも3ゴールを決め、勝負強さを見せた。最終スコアは83-45でMAXがまずは初戦を勝利で飾った。

中澤の活躍で流れをつかんだ 〜対埼玉ライオンズ戦

1Q開始のタップからいきなりの速攻でMAXが先制する。ライオンズはNo.13石原正治にどう打たせるか、という攻め方。対するMAXは怜央・高橋を中心に、藤井のアウトサイド、中澤のリバウンドシュートなどで加点していく。1Q終盤からフルコートプレスをしかけ、ギアチェンジを図るが乗り切れない。14-8で終了。

2Q。藤井の3ポイントシュートで先手をとる。速攻から藤井の連続シュートでたまらず埼玉はファール。カウントワンスローも決めて一気に10点差に広げた。中盤、互いにシュートが決まらない。均衡を破ったのは埼玉・石原の連続カットインシュート。これで5点差につめよられ、流れが埼玉に傾きかけたところで中澤がミドルシュートを決める。これで埼玉に行きかけた流れを引き戻した。終了間際、怜央がゴール下に殴りこみシュート。再び10点差に広げて前半を終えた。

3Qの先手をとったのは埼玉。その後はとられたら取り返す、一進一退の時間帯が続く。中盤からMAXはフルコートプレスをしかけ、リズムを変えようと試みる。高橋の連続ミドルシュート、怜央のアウトサイドからのシュートが立て続けに決まり、点差を開く。

4Qの立ち上がり、中澤がゴール下シュートを決める。その後はインサイドからアウトサイドから、早いパス回しからのシュートが決まり、着実に点差を広げていった。残り3分を切って、埼玉は3ポイントシュートを多投するも決まらない。残り1分で交代した向後がとどめの3ポイントシュートを沈め、61-38で埼玉ライオンズを振り切り、3年連続で準決勝に駒をすすめた。

 

垣間見えたチームの成長 

二日目を終えて宿舎に帰る車の中、選手は何を思っていただろう。
試合中、何度と無く岩佐は「いつもやっていることをやればいい」と激を飛ばした。いくら無心をこころがけても、シードチームとして他チームからの挑戦を受ける立場にあることが、「負けられない」という無意識の思いを生む。加えて今回の試合直前にチームを襲ったトラブル。選手自身、さぞかしコントロールが難しかったことだろう。

初戦、二戦目とも、相手のペースに合わせてしまって自分達のバスケができない時間帯があった。去年までのMAXなら、いくら岩佐が尻をたたいてもリズムを取り戻すことができず、ずるずると崩れてしまったかもしれない。しかし、今は違う。ゲーム中にミスをしても、自分達は何をなすべきか、何を頑張るべきかを知っている。岩佐イズムの浸透とともに、チームとしての成長を感じた選手権二日目であった。


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